奇蟲野外観察記

​ フィールドに出れば自ずと奇蟲にも遭遇する。かなり面白いものを目にする機会が増えたため幾つか紹介したい。野外観察記というわりには生態写真より捕獲後写真の方が多いのは、仕方のないこと。
ヨロイオオムカデ
ヨロイオオムカデ
ヨロイオオムカデ
​赤脚ヨロイオオムカデ
​ 夜のジャングルを歩いている際にフと目に入った。東南アジアはヤスデが非常に多様で、こういう系で目に付くものはほぼほぼヤスデである。しかし、これはヤスデではない空気を纏っていた。さらに記憶の中で合致する、西洋の鎧を彷彿とさせる独特な背板と縞模様の曳航肢は、、、。ヨロイオオムカデじゃないか?その答えには直ぐにたどり着いたが、確信を持つ事はできなかった。その理由は言うまでもない。脚が赤いからだ。ヨロイオオムカデの歩脚は黒褐色だと完全に思っていた。知っている海外のムカデは?と訊かれたら6つ程度しか答えられないような奇蟲に詳しくない自分でもわかる。おそらくこれはとんでもないものを見つけてしまったのだろうと。
すぐさま友人にヨロイオオムカデであるか確認し、SNSに投稿した。ただでさえ最もレアなムカデと言っても過言ではないことに加え、赤脚というこれまでにない知見をプラスして叩き出したわけである。正直奇蟲好きな連中もまさか赤脚のヨロイオオムカデなんて代物が存在するなぞ知りもしなかっただろう。肌で感じるほどの羨望と嫉妬は正直心地よかった。まさに奇蟲界隈に一石を投じた、いや、巨岩を放り投げた瞬間だ。ぜひ我が後を追って欲しい。
ヨロイオオムカデ
Edentistoma
マレーシアンジュエル
マレーシアンジュエル
マレーシアンジュエル
 ゲンティンハイランドのジャングルにて夜間探索をしていたが、足場が悪く傾斜も急で道も藪がちになりこのまま進むか悩みつつ木の上を眺めながら歩いていると、3m程度の高さの木の幹に鮮やかな何かが付いているのが目に入った。あの赤青なムカデは知っている。マレーシアンジュエルだ。どうやら眠っているらしく、ピクリとも動かない。マレーシアンジュエルは結構珍しくてなかなか野外で目にする機会は奇蟲屋でもないと聞くが、案外見つかるものだなと思いつつ慎重にネットイン。
 頭から見て、黄色い触角と青色の歩肢、赤色の歩肢へ色彩が変化するかと思ったら再度青色の歩肢と曳航肢。何度見ても不思議なカラーリングをしている。美しい。大きさも一般的なオオムカデのサイズをしているため、迫力がある。これはみんな大好きになっても仕方ない。
リオック
リオック
 夜にジャングル沿いの道を歩いているとオレンジ色の大きな虫が歩いているのが見えた。ツヤクワガタか?と期待しながら近づくとコロギスだったため期待を裏切られた気分になった。しかし、異様に大きい。70mmくらいある。まさかと思いつつとりあえず写真を一枚だけ撮り、あとで調べてみたがそのまさかであった。リオックだ。最強最大の肉食直翅と有名な虫であり、たまに日本にも輸入されている。しかし野外で見たと言う話はまず聞かない。これは珍しいものを見ることができた。にしてももっとまともな写真を撮っておけば良かったと思うものの、直翅の写真を撮っているだけでも上出来であると思わなくもない。ジャングルの奥地でなくとも見れるものではあるようだ。
​アカガネヒメマルゴキブリ
 綺麗で人気なゴキブリというと(最近は話題のルリゴキという人も増えたと思うが)ニジイロゴキブリを思い浮かべるだろう。本種はそのニジゴキと同様の金属光沢を持った美しいGである。しかもヒメマルゴキブリの一種であるため、丸まることができる。色彩としては赤褐色であるため、まるで銅。アカガネヒメマルゴキブリと呼びたい。
ニジイロゴキブリ
アカガネヒメマルゴキブリ
 野外でゴキブリを見て美しいと思ったのはこれが初めてだった。さらに言えば初めて野生のゴキブリを素手で捕獲して観察した。本当に良いゴキブリだと思う。貴金属が好きだったりするので、こういう系はもはや飼いたいとまで思わせてくる。現地では低標高のジャングルにて朝方に木の幹をスタスタと移動していた。
​アジアンフォレストスコーピオン
 雨上がりのジャングルで黒光りする大きな虫が動くのが見えた。サイズ感からアトラスオオカブトかと思って駆け寄ってみると、何と立派なアジフォであった。石垣島でヤエヤマサソリは見たことあったが、一般的にサソリと言われてイメージするサイズのものを野外で見ると結構圧倒される。キョクトウサソリ科ではないので刺されても死にはしないだろうが、下手に刺激するつもりもなかったので数枚撮影してその場を後にした。
 正直この時は一人でマレーシアに来ていたので、こんなに簡単に毒生物が出るなら改めて足元に気をつけないとなと気を引き締めるきっかけになった。
アジアンフォレストスコーピオン